2024年度
理事長所信

はじめに

私は2014年、27歳になる年に泉青年会議所(「以下 JCI泉」)に入会しました。秋田で生まれ育ち、この地域に所縁がなかった私は、青年会議所(以下「JC」)という団体がどんな団体かもよくわからず、ただ仕事でのつながりを求めて入会を決意しました。入会して直後の40周年記念式典・記念事業での先輩達の立ち振る舞い、翌年2015年に我々の活動エリアで発生した豪雨災害において、一心不乱に毎日泥かきのボランティアをする先輩達の行動力に、「自分もあんな風になりたい」と抱いた憧れの想いを今も大切にしています。

JCI泉は1974年9月14日、旧泉市に全国で568番目のJCとして誕生し、今日に至るまでこの地域の発展のため、そして会員個人の成長のために歩みを続けてきました。創立からの50年で社会状況や地域課題は大きく変化を遂げていますが、青年としての英知と勇気と情熱をもって「我々の力でこのまちをもっと良くしていこう」という創始の精神はしっかりと受け継がれています。我々が今こうして活動できるのも先輩達がこれまで50年間汗と涙を流し、歴史を紡いでこられたおかげであり、前述した先輩達の格好いい姿の根源は、まさにこの精神が脈々と受け継がれているからだと考えます。これまでJCI泉を率いてこられた先輩達、そして関わっていただいたすべての関係各所の皆様へ心から感謝を申し上げるとともに、新たな時代に向けて、今一度JCがどうあるべきか、地域のために何ができるか、これまでの運動の検証を行い、次世代に向けたまちと組織のビジョンを構築いたします。このビジョンをもとにさらなる運動を展開し、地域を巻き込みながら、より持続可能な地域へと未来への輪を発展させていきます。

50周年を機としたビジョン作成と
新たな交流から生まれる未来への輪

JCI泉は今年度、創立50周年を迎えます。この50年で社会は大きく変化し、設立当初活動の中心であった泉市は仙台市泉区へ、また富谷町は富谷市へと新たな行政として移り変わりました。社会が変わり、地域のあり方も変化する中で様々な課題が発生しようとも、先輩達が紡いでこられた50年という長い歴史の中では、常に情熱をもって議論を交わし幾多の困難を乗り越えながら、「市民の意識を変える」運動を展開してきました。これまで先輩達が積み重ねてきた功績を振り返り、創始の精神を次世代へ継承していくことで、さらなる地域の発展につなげていきます。また、JCは「明るい豊かな社会の実現」を長期ビジョンとして掲げていますが、社会が劇的に変化する時代の中で、より地域の人々に共感を生む運動をつくるためには、まちの、そして我々の組織の中期ビジョン策定が必要だと考えます。JCは単年度制を採用しており、1年で役職がすべて変わってしまう組織です。我々の目指すべき方向性が毎年大きくぶれてしまうとすれば、本当に地域から求められる運動を起こすことはできません。だからこそ、なにをするか、どうするかの前に、「どうあるべきか」のビジョンが必要です。

今年度は創立40周年に策定した運動指針「人をつなぎ未来へつなぐ まち(地域)づくり」を検証するとともに、次世代に向けて、「まちの未来はどうあるべきか」、「JCはどうあるべきか」を行政や学生、市民の皆様との関わりをいただきながら中期ビジョンを策定いたします。また、JCI泉はこれまでの50年という長い歴史の中で、JCIパラニャーケ パンバト(フィリピン)との姉妹LOM締結、ラオスでの小学校建設などの海外事業を行ってきました。多様性が求められる今の時代だからこそ国際的な視点は必要であり、本年はJCの国際ネットワークを最大限活用し、地域の人々と共に新たな国際交流を行っていきます。このまちがもっと良くなる、組織がさらに発展を遂げる、そんなビジョンを策定し、また新たな交流から未来への輪を広げていきます。

会員拡大から生まれる未来への輪

私は会員の拡大こそが、人の意識を変え、行動を変える、1番の運動だと思っています。私が入会した2014年の期首会員数は32名でしたが、今は3倍以上の会員数になり、予算的にはより大きな事業を実施できるようになりました。そして、日本青年会議所・東北地区協議会・宮城ブロック協議会にも多くの出向者を輩出できるようになりました。このように人財的な部分、財政的な部分での会員拡大の効果はもちろん大きいですが、私は会員拡大の意義はJCI Missionの達成にあると思います。JCI Missionでは「青年会議所は、青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供する」とあります。社会を変えられるリーダーシップをもった人財が1人よりも10人、10人よりも100人いる方が、地域を本気で変えられる力をもつのではないでしょうか。この地域に共感を生む運動をつくり続けるためには、会員の拡大は必要です。昨年までJCI泉は11年連続33%会員拡大に成功しておりますが、今年度も33%会員拡大を達成いたします。

ただし、やみくもに会員を拡大すればいいということではありません。入会した方が、JCへの魅力を感じず、すぐに退会してしまっては何の意味もありません。JCがどんな団体で、どんな関わり方や成長ができるか、しっかりとJCの理念を伝え、我々の団体に共感をもって入会していただければ、入会後のギャップも解消できるのではないでしょうか。

今年度は、これまでの会員拡大を検証し、組織としての拡大中期ビジョンを策定いたします。5年後、10年後、JCI泉の組織はどうあるべきか、そのために会員拡大をどう考えるか、会員で議論を重ね、JCの理念に共感し入会いただく会員を増やします。また、昨年は女性の会員拡大にも力を入れ、多くの女性会員を迎え入れることができました。多様性に溢れ、持続可能な組織をつくるためには、女性や20代の若手会員、公務員や会社員の方など、多種多様な人財が必要です。そのような人財が地域のリーダーとして活躍し、自らJCに入会したいという人が増える、未来への輪を広げていきます。

研修から広がる未来への輪

近年JCI泉は、会員の拡大に成功し会員が大幅に増加した一方で、入会3年未満の会員が半数を超えている現状があります。また、入会していただいたとしても志半ばで退会してしまう会員も少なからずおります。これまで受け継がれてきた伝統やJCの理念への理解が十分でない状況では、地域によりインパクトを残せる運動を起こすことができませんし、組織力を高めることも難しくなります。

JCの基礎や理念、運動構築を共に学びながら、自分は何のために、誰のために、なぜJCをしているのか考えるきっかけを提供していきたいと考えています。目的意識があるのとないのでは成果が違ってきます。ある寓話のお話の中で、教会を建設する3人の職人のお話が登場します。その職人たちに「いま何をしているのか?」と聞くと、1人は「見れば分かるだろう。仕方なくレンガを積んでいる。」と答え、もう1人は「家族を養うために、レンガ積みの仕事をしている。」と答え、最後の一人は「歴史に残る大聖堂をつくっている。」と答えたそうです。Jayceeであるならば、もちろん3人目の職人のように目的意識をもち、果敢に活動して欲しいと思っています。今年度はまちや組織のビジョンを構築していくのはもちろんですが、会員一人ひとりの将来ビジョンを構築する機会を提供していきます。この将来ビジョンを構築することにより、今後のJC活動だけではなく、仕事や家庭生活にも活きてきます。

JCには、個人の機会、地域の機会、国際の機会、ビジネスの機会の4つの機会が全会員平等に与えられます。この機会を活かし、共に学びあい、成長していきましょう。目的意識をもち、会員同士が切磋琢磨することで、この組織に未来への輪が広がります。

共感から広がる未来への輪

私は、地域にインパクトを与える運動を起こすためには、真に共感を生む広報が必要だと思います。JCはよく「広報下手」と言われますが、JCがどんな団体で、どんな活動をしているのか、もっと言えばJCの存在すら知らない市民が多くいるのが現状です。また、現代社会ではSNS等の情報通信手段が多様化していく中で、膨大な情報が溢れており、興味がない情報については、その人のもとに届かず、埋没してしまいます。共感を生み出す効果的な広報には、対象者を明確にし、「面白そう」「参加してみたい」と感じていただける戦略が必要です。

また、共感を生む広報ができれば、JCに対しての認知、理解につながり、やがては「一緒に活動したい」と思っていただく人を増やすことができます。今年度は効果的な広報活動から、会員の拡大につながる機会を増やします。

さらに、組織への愛着を高めるためには、対内広報のあり方も重要です。今年度JCI泉は創立50周年を迎えるにあたり、これまで先輩達がどんな想いで、どんな活動をしてきたか、JCI泉のこれまでの歩みを理解できる機会を提供していきます。我々の活動を組織内外に効果的に届けることで共感を生み出し、この地域に未来への輪を広げていきます。

JCのスケールメリットを活かした未来への輪

私は2014年の入会以来、出向や各種大会の参加によって多くの学びを得てきました。JCは国際的な組織であり、国際青年会議所(「以下 JCI」)には100を超える国が加盟し、約15万人の会員が世界にはおります。JCのスケールメリットを活用することで、LOMでは経験できない多種多様な価値観に触れ、自己成長につなげることができます。また、日本全国、世界各地の仲間と友情を育む素晴らしい機会にもなります。

さらに今年度は、宮城ブロック協議会会長を輩出する機会をいただきます。会長輩出LOMとして、宮城ブロック協議会の運動にコミットさせていただくとともに、各出向先に多くの出向者を輩出いたします。この機会を最大の好機と捉え、会員自身の成長と組織のさらなる発展につなげ、未来への輪を広げていきます。

次世代に向けた具体的な
アクションから広がる未来への輪

私は秋田で生まれ育ち、23歳でこの地に来ましたが、このまちの人、まち並み、自然、風土、食べ物が大好きです。だからこそ、この地域が持続的に輝いていて欲しいと切に願っております。我々は、仙台市泉区・富谷市・大和町・大郷町・大衡村の1区1市2町1村を活動エリアとしており、仙台市のベッドタウンとしての都市機能を有している一方で、泉ヶ岳や七北田川に代表される豊かな自然資源と富谷宿、吉岡宿といった歴史、文化資源などの魅力が点在する地域です。しかしながら、大半の地域では少子高齢化や人口の流出により、今後地域の活力が失われてしまう懸念があります。我々は、「この地域のことが好きで誇りに思う」人々を増やしていく必要があり、そのためには、このまちの今後あるべきビジョンを明確にすることと産学官民強固な連携を図り、継続的な運動を起こしていくことが求められます。JCの運動とは、対象者の意識を変え、そして行動を変えて、やがて周りの意識と行動すらも変えていく、言わば波紋のような広がりを見せるものだと私は考えています。もちろん、1回の事業だけでは、人の意識はなかなか変えられません。ただそれを、地道に継続していけば、徐々に社会は変えていけるはずです。

今年度は、例会や事業に縛られない年間を通した継続的な運動と、昨年までのSDGs推進事業を具体化する年にしていきます。SDGsについては、ここ数年で認知度は大幅に上昇し、今もなお様々な場所でSDGsの推進活動が行われております。しかしながら、認知されているだけでは、根本的な解決につながりません。持続可能な社会の実現に向けて、市民がより一層具体的な行動を起こすことが求められます。JCI泉ではこれまで2019年よりSDGsを推進しており、各行政また関係諸団体とSDGs連携協定を締結させていただきました。今年度はその協定をもとに、より具体的なアクションを起こし、多くの人を巻き込んで運動を展開いたします。大好きなこのまちの将来を見据えた、継続的かつ具体的な運動により、未来への輪を広げていきます。

地域全体でかかわる
こどもたちの未来への輪

私には4歳の息子がいます。その我が子が大人になったとき、果たしてこの地域はどうなっているのと考えることがあります。

少子化、核家族化、情報化、国際化、また新型コロナウイルス感染症で社会が急激に変化をし、人々の価値観や生活様式が多様化している一方で、人間関係の希薄化や地域社会のコミュニティーの衰退で、子育てや家庭を取り巻く環境は大きく変わりました。私がこどもの頃であれば、悪いことをすれば、近所の方も一緒になってダメだよと諭してくれました。時代によって、こどもたちが置かれている立場が変化することは当然ですが、いつの時代も人は人との関わりの中でしか生きてはいけません。地域全体でかけがえのない未来を担うこどもたちを育てていくということが重要です。

今後の社会は私たちが思っている以上に劇的に変化をしていくでしょう。その中で生き抜いていくためには、他を思いやれる心、変化を恐れず柔軟に対応できる力、自分で考えて行動を起こす力が求められます。今年度も、この地域の資源を活用した原体験をこどもたちに提供することで、将来を生き抜く力を養います。これまで体験したことのない景色を見たこどもたちは、大人が思っている以上に成長し、将来に対して希望をもちます。私は仕事で、高校生へ将来の夢やライフプランについて授業をする機会がありますが、年々大きな夢や目標をもった生徒が少なくなっていると感じます。こどもたちには、現状維持ではなく大きな夢や目標をもって欲しいと切に願います。それをサポートしていくのは我々大人の責任ではないでしょうか。こどもたちはまさに無限の可能性を秘めています。地域のこどもが大人になるにあたり、この地域との関わりの中で夢に向かって前向きに育っていって欲しい。この地域のみなさんと一緒に、こどもたちの素晴らしい未来をサポートしていく、そんな未来への輪を広げていきます。

多くのパートナーとの
協働から生まれる未来への輪

JCI泉には、先輩達から紡がれ、地域の市民からも広く認知されている多くの事業があります。昨年度JCI泉では、運動の理念を社会に広めることを目的としてサポーター制度を創設し、泉区民ふるさとまつりでの鮎のつかみ取りなど、これまでの歴史の中で紡がれてきた事業をサポーターの皆様と一緒に実施いたしました。運動継承の下地を作ることができた他、サポーターの見地も取り入れながら行うことで、事業の質もブラッシュアップすることができました。

継続事業は、市民に認知され、人も集められる偉大な発信装置です。今年度も昨年度同様に、先輩達から受け継いできた素晴らしい継続事業を、地域のサポーターとともに連携し、ブラッシュアップしながら行うことで、我々の理念に共感し、「この事業、我々がやりたい」と思っていただける土壌を作っていきます。

また、サポーターと連携しながら進めていく他に、今年度は新入会員にも継続事業の構築に関わっていただきます。入会した新入会員は、JC活動に対して大きな期待を抱く半面、不安を感じて入会している会員も少なくないと思います。継続事業をサポーターと一緒に進めていく中で、JCの運動構築の仕方やリーダーシップを実践的に学べるのはもちろんですが、同期入会である新入会員同士の横のつながりも深め、まずはこの組織を好きになって欲しい、心からそう思っております。サポーターと新入会員が一丸となって、地域のために行動を起こす、この1歩目の行動が自発的な運動へと進化し、未来への輪を広げていきます。

確かな会議から生まれる未来への輪

私は入会した当初、侃々諤々と意見をぶつけあうJCの会議に驚かされました。しかし、運動をつくるうえでは、すべてがこの会議から始まり、この会議の場こそが本当に重要なのだと後に気が付きました。JCはその名の通り、これまで徹底して質の高い会議を求め、地域に運動を展開してきました。私たちの組織が50年間紡ぎ紡がれてきたのも確固たる会議に裏付けされた組織運営を行ってきたからです。質の高い会議を追求するうえでは、期限を遵守した規律のある会議運営やスムーズな会議進行が求められます。時代の変化の中で変えるべきところはもちろん変えるべきですが、規律を重んじることは、妥協なき事業構築にもつながってきます。また特に議論が白熱し、会議の時間が長くなるケースもありますが、本当に議論したいポイントだけを抑えて会議をすることも時には必要かと思います。時間はだれしも平等であり、有限です。与えられた時間の中で効率的に議論を酌み交わし、参加者皆が納得できる会議を目指していきます。

5年後、10年後、所属する会員が有意義に活動し、誰もが活躍できる組織へと進化するために、今年度は組織のあり方についても徹底的に議論をし、次の時代へつながる組織運営を行っていきます。質の高い会議、組織運営から生まれる運動が、未来への輪を広げていきます。

結びに

1949年9月3日「新日本の再建は我々青年の仕事である」という志で東京青年商工会議所を作った先人達がいました。

そしてその25年後、1974年9月14日に「この地域のためにJCを」という想いで泉青年会議所を作った先輩達がいました。

その道のりは、どちらも険しいものだったに違いありません。しかし、幾多の困難があろうとも、先輩達は未来への大きな希望をもち、強い志と情熱をもって挑戦を繰り返してきました。

我々がいまこうして、当たり前のように日々活動できるのは、紛れもなく50年という時代を紡いでいただいた先輩達のおかげです。偉大なる先輩達へ心から感謝の意を述べるとともに、次の時代へしっかりとバトンをつないでいくことをお約束いたします。

会員の皆さん、一緒に歴史を刻んでいきましょう。新しい挑戦には数々の困難があるかもしれません。しかし、我々は一人ではありません。我々にはかけがえのない仲間がいます。その仲間と共に、素晴らしい運動を一緒に作っていきましょう。一緒に成長していきましょう。まだ見ぬ、未来への輪を広げていくために。

2024年度 理事長 髙橋 大地